『③ 高血圧の食事管理|減塩のコツとおすすめの食べ物・レシピ』

目次

はじめに

こんにちは、院長の山須田です。

「薬を飲みたくない」「できるだけ自然な方法で血圧を下げたい」と思っている方は多いのではないでしょうか。実は、適切な食事管理は高血圧治療の基本であり、場合によっては降圧薬と同等の効果を発揮することも。

日本人の多くは知らず知らずのうちに塩分を摂りすぎていますが、それだけではなく、カリウムやマグネシウムなどの血圧を下げる栄養素が不足していることも多いのです。

この記事では、高血圧専門医の立場から、科学的根拠に基づいた食事管理の方法を詳しく解説します。減塩のコツから血圧を下げる食材、外食時の注意点、さらにはサプリメントの効果と限界まで、幅広く紹介します。この記事を参考に食習慣を見直して、健康的な血圧を目指しましょう。

目次

  1. 高血圧の人が食事で気をつけること
    • 塩分を控える理由と減塩のコツ
    • 高血圧に良い栄養素(カリウム・マグネシウムなど)
  2. おすすめの食材と避けるべき食品
    • 高血圧を改善する食材(野菜・果物・魚など)
    • 血圧を上げる食品(加工食品・アルコール・糖質過多)
  3. DASH食とは?実践のポイント
    • DASH食の基本と効果
    • 簡単な減塩レシピの紹介
  4. 外食時の血圧対策
    • レストランでの上手な注文方法
    • 外食メニューの塩分を減らすコツ
  5. 機能性表示食品・サプリメントと血圧
    • 科学的に効果が認められている成分
    • サプリメントの限界と正しい使い方

高血圧の人が食事で気をつけること

塩分を控える理由と減塩のコツ

塩分と高血圧の関係

塩分(特にナトリウム)の過剰摂取は高血圧の主要な原因の一つです。ナトリウムは体内の水分量を調節する重要な電解質ですが、摂りすぎると体内に水分を貯め込み、血液量が増えて血圧が上昇します。また、血管の収縮を促進する作用もあります。

日本人の平均塩分摂取量は1日約10gと言われており、これは日本高血圧学会が推奨する目標値(6g/日未満)を大きく上回っています。さらに、日本人は「塩分感受性」が高い民族と言われ、同じ量の塩分でも血圧が上昇しやすい傾向があります。

塩分制限による効果

塩分摂取量を1日6g未満に抑えることで、収縮期血圧を平均で4〜6mmHg、拡張期血圧を2〜3mmHg低下させる効果があるとされています。特に以下の方々は「塩分感受性」が高く、減塩の効果が大きいと言われています。

  • 高齢者
  • 肥満の方
  • 糖尿病の方
  • 慢性腎臓病の方
  • 家族に高血圧の方がいる人

実践しやすい減塩のコツ

  1. 調味料を見直す
    • 醤油・味噌・ソースなどは減塩タイプを選ぶ
    • 出汁(かつお、昆布、干し椎茸など)をうまく活用する
    • 酢、レモン汁、香辛料などで塩の代わりに風味をつける
    • 調味料は「かける」より「つける」スタイルにする
  2. 食品選びのポイント
    • 食品成分表示で塩分(ナトリウム)量を確認する
    • ナトリウムは2.5倍すると食塩相当量になる
    • 缶詰や漬物などの加工品は塩分が多いので注意
    • パンは塩分が意外と多いので量に注意
  3. 調理の工夫
    • 野菜や果物の自然な甘みを活かす
    • 香辛料(黒コショウ、唐辛子、カレー粉など)を活用する
    • 香味野菜(ねぎ、しょうが、にんにくなど)の風味を利用する
    • 電子レンジ調理は素材の味が出やすく、塩分を抑えられる
  4. 食卓での工夫
    • 卓上に塩や醤油を置かない
    • 汁物やスープは具沢山にして汁を残す
    • 小皿に取り分けて食べる(つゆの量を減らせる)
    • 薄味に慣れるまで我慢する(約1〜2ヶ月で味覚は適応する)

高血圧に良い栄養素(カリウム・マグネシウムなど)

高血圧対策は「減塩」だけではありません。血圧を下げる効果がある栄養素を積極的に摂ることも大切です。

カリウム

カリウムは体内のナトリウム排出を促進し、血圧を下げる効果があります。1日の目標摂取量は3,500mg程度です。

  • 効果: 尿中へのナトリウム排泄を促進し、血管を拡張させる
  • 豊富な食品: バナナ、アボカド、ほうれん草、じゃがいも、トマト、オレンジ、乾燥果物
  • 注意点: 腎機能障害のある方は、カリウム制限が必要な場合があるので医師に相談

マグネシウム

マグネシウムは血管を拡張させる作用があり、血圧を下げる効果が期待できます。

  • 効果: 血管平滑筋の弛緩、カルシウムの働きを抑制
  • 豊富な食品: 玄米、そば、豆類、緑葉野菜、ナッツ類、海藻
  • 注意点: 過剰摂取は下痢などの症状を引き起こす可能性がある

カルシウム

適切なカルシウム摂取は血圧を安定させる効果があります。

  • 効果: 血管の収縮を抑制、ナトリウムの排出を促進
  • 豊富な食品: 乳製品、小魚、豆腐、緑葉野菜
  • 注意点: 吸収率を高めるためにビタミンDと一緒に摂取するとよい

食物繊維

食物繊維は間接的に血圧を下げる効果があります。

  • 効果: コレステロール低下、体重管理、血糖値の安定化
  • 豊富な食品: 全粒穀物、豆類、野菜、果物、海藻
  • 摂取目標: 1日20g以上

不飽和脂肪酸

オメガ3脂肪酸をはじめとする不飽和脂肪酸には、血圧を下げる効果があります。

  • 効果: 血管の炎症を抑制、血管拡張作用
  • 豊富な食品: 青魚(さば、さんま、いわし)、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、ナッツ類
  • 注意点: 酸化しやすいので保存方法に注意

おすすめの食材と避けるべき食品

高血圧を改善する食材(野菜・果物・魚など)

野菜・果物

野菜や果物には、カリウムや食物繊維、抗酸化物質などが豊富に含まれており、高血圧改善に効果的です。

  • 緑黄色野菜: ほうれん草、小松菜、ブロッコリー(カリウム、マグネシウム、食物繊維)
  • 根菜類: じゃがいも、さつまいも、にんじん(カリウム、食物繊維)
  • きのこ類: しいたけ、えのき、まいたけ(カリウム、ビタミンD)
  • 果物: バナナ、キウイ、オレンジ、りんご(カリウム、食物繊維)
  • ベリー類: ブルーベリー、いちご(抗酸化物質)

魚介類

魚、特に青魚には血圧を下げる効果があるEPAやDHAが豊富に含まれています。

  • 青魚: さば、さんま、いわし、あじ(EPA、DHA)
  • 白身魚: たら、かれい(良質なタンパク質)
  • 貝類: あさり、しじみ(タウリン)

大豆製品

大豆製品には植物性たんぱく質やイソフラボンが含まれており、血圧を下げる効果があります。

  • 豆腐、納豆、味噌、豆乳(植物性タンパク質、イソフラボン)
  • 減塩タイプの味噌や醤油を選ぶとより効果的

乳製品

低脂肪の乳製品はカルシウムが豊富で、適度な摂取は血圧を下げる効果があります。

  • 低脂肪牛乳、ヨーグルト、チーズ(カルシウム)
  • 無糖のヨーグルトがおすすめ

全粒穀物

精製された白米や小麦粉製品よりも、全粒穀物は食物繊維やミネラルが豊富です。

  • 玄米、全粒粉パン、オートミール(食物繊維、マグネシウム)

ナッツ・種子

適量のナッツや種子類には、不飽和脂肪酸やマグネシウムが豊富に含まれています。

  • アーモンド、くるみ、亜麻仁(不飽和脂肪酸、マグネシウム)
  • 1日一握り程度(約30g)が目安

血圧を上げる食品(加工食品・アルコール・糖質過多)

以下の食品は血圧を上げる可能性があるため、できるだけ控えるか摂取量に注意しましょう。

塩分の多い食品

  • 加工肉: ハム、ベーコン、ソーセージ
  • 漬物: 梅干し、たくあん、キムチ
  • 塩蔵魚: 塩鮭、塩さば、干物
  • スナック菓子: ポテトチップス、塩せんべい
  • インスタント食品: カップ麺、レトルト食品

高糖質・精製炭水化物

糖質の過剰摂取は肥満や糖尿病のリスクを高め、間接的に高血圧を悪化させます。

  • 砂糖、白パン、菓子パン、ケーキ、クッキー
  • 清涼飲料水、果汁100%ジュース(糖分が多い)
  • 白米(玄米や雑穀米に置き換えるとよい)

アルコール

過剰なアルコール摂取は血圧を上昇させます。適量を心がけましょう。

  • 推奨上限:
    • 男性: 日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイン1/4本程度
    • 女性: 男性の半分程度
  • 休肝日: 週に2日以上のアルコールを摂らない日を設ける

トランス脂肪・飽和脂肪が多い食品

これらの脂肪は血管を硬くし、血圧上昇につながります。

  • マーガリン(特に固形タイプ)
  • ショートニングを使った菓子
  • 脂身の多い肉
  • フライドフード

カフェイン

カフェインは一時的に血圧を上昇させることがあります。

  • コーヒー、紅茶、エナジードリンク
  • 個人差があるため、血圧が気になる方は摂取後の血圧変化を確認する

DASH食とは?実践のポイント

DASH食の基本と効果

DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、高血圧予防・改善のために米国国立衛生研究所(NIH)が推奨する食事法です。臨床試験で効果が実証されており、薬に頼らない血圧管理の方法として世界的に認められています。

DASH食の基本原則

  1. 野菜・果物を豊富に摂る
    • 1日4〜5サービング(1サービングは野菜なら小鉢1皿程度、果物は中サイズ1個程度)
    • カリウム、マグネシウム、食物繊維の摂取につながる
  2. 全粒穀物を選ぶ
    • 白米より玄米、白パンより全粒粉パン
    • 食物繊維やミネラルが豊富
  3. 低脂肪または無脂肪の乳製品を摂る
    • 低脂肪牛乳、無糖ヨーグルト、低脂肪チーズ
    • カルシウム摂取につながる
  4. 魚、鶏肉、豆類などの植物性タンパク質を中心に
    • 赤身の肉は週に数回程度
    • 良質なタンパク質やオメガ3脂肪酸を摂取
  5. ナッツ、種子、植物油を適量摂る
    • オリーブオイル、アーモンド、くるみなど
    • 健康的な不飽和脂肪酸を補給
  6. 甘いものや加工食品を制限する
    • お菓子、清涼飲料水、加工食品は最小限に
    • 添加された砂糖や塩分を減らす
  7. 塩分(ナトリウム)を制限する
    • 目標は1日6g未満(理想的には3〜4g)

DASH食の効果

DASH食を2〜4週間実践することで、以下のような効果が期待できます:

  • 収縮期血圧: 平均8〜14mmHg低下
  • 拡張期血圧: 平均4〜7mmHg低下
  • コレステロール値の改善
  • 体重管理
  • 糖尿病リスクの低減
  • 心臓病・脳卒中リスクの低減

日本版DASH食の考え方

DASH食は米国で開発されたものですが、日本の食文化に合わせたアレンジも提案されています:

  • 和食の基本(一汁三菜)を活かす
  • 出汁をうまく使い、減塩する
  • 魚介類や大豆製品を積極的に取り入れる
  • 漬物や塩蔵品は控えめに
  • 野菜の小鉢を増やす

簡単な減塩レシピの紹介

DASH食の考え方を取り入れた、簡単で美味しい減塩レシピをいくつか紹介します。

朝食メニュー: 彩り野菜のオープンサンド

材料(1人分):

  • 全粒粉パン 1枚
  • アボカド 1/4個
  • トマト 1/2個
  • ほうれん草 少量
  • 卵 1個
  • オリーブオイル 小さじ1
  • 黒こしょう 少々

作り方:

  1. アボカドをつぶし、レモン汁を少し加えてパンに塗る
  2. 卵を目玉焼きまたはポーチドエッグにする
  3. スライスしたトマト、ほうれん草を並べる
  4. 卵をのせ、オリーブオイルをかけ、黒こしょうをふる

ポイント: 塩を使わず、野菜の自然な塩味と香辛料で風味をつける

昼食メニュー: 香味野菜たっぷり冷やし中華

材料(1人分):

  • 中華麺(塩分控えめ) 1玉
  • きゅうり 1/2本
  • トマト 1個
  • もやし 1/3袋
  • 鶏ささみ 1本
  • 卵 1個
  • ショウガ、ニンニク 各少々
  • 酢 大さじ1
  • 醤油(減塩) 小さじ1/2
  • ごま油 小さじ1
  • 黒すりごま 適量

作り方:

  1. 鶏ささみを茹でて細かくさく
  2. 野菜を千切りまたは薄切りにする
  3. 卵を薄焼きにして細切りにする
  4. 麺を茹でて冷水でしめる
  5. タレを作り、具材と麺を和える

ポイント: 酢の酸味と香味野菜の風味で、少ない醤油でも満足感がある

夕食メニュー: 彩り野菜と鮭の蒸し料理

材料(2人分):

  • 生鮭 2切れ
  • ブロッコリー 1/2株
  • パプリカ(赤・黄) 各1/4個
  • しめじ 1/2パック
  • レモン 1/2個
  • オリーブオイル 大さじ1
  • にんにく 1片
  • ハーブ(タイム、ローズマリーなど) 適量
  • 黒こしょう 少々

作り方:

  1. 野菜を食べやすい大きさに切る
  2. クッキングシートに野菜を敷き、その上に鮭を置く
  3. オリーブオイル、にんにく、ハーブ、レモン汁をかける
  4. 包んで、オーブンまたはフライパンで蒸し焼きにする

ポイント: ハーブやレモンの香りで塩分控えめでも満足感がある

副菜: カリウム豊富な小松菜と干し椎茸の煮浸し

材料(2人分):

  • 小松菜 1束
  • 干し椎茸 4枚
  • だし汁 1カップ
  • 醤油(減塩) 小さじ1
  • みりん 小さじ1

作り方:

  1. 干し椎茸を戻す(戻し汁は捨てずに使う)
  2. 小松菜を食べやすい大きさに切る
  3. だし汁と戻し汁で椎茸を煮る
  4. 小松菜を加えてさっと煮る
  5. 最後に調味料を加える

ポイント: だしの旨味を活かし、調味料は最小限に

外食時の血圧対策

レストランでの上手な注文方法

外食は塩分や脂質が多くなりがちですが、上手に注文すれば高血圧の方でも楽しむことができます。

外食前の準備

  • 可能であれば事前にメニューをチェック
  • その日の他の食事で塩分や脂質を控えめにしておく
  • 空腹で行くと食べ過ぎるので、少し何か食べてから行く

注文の基本戦略

  1. 調理法を指定する
    • 揚げ物や炒め物より、「蒸す」「焼く」「煮る」調理を選ぶ
    • 「ソースは別添えで」とリクエストする
    • 「塩控えめで」と伝える(高級店ほど対応してくれることが多い)
  2. 前菜・サラダの選び方
    • ドレッシングは別添えにしてもらい、量を調整
    • 生野菜や温野菜のサラダがおすすめ
    • スープは具沢山のものを選び、汁は残す
  3. メイン料理の選び方
    • 赤身肉よりも魚や鶏肉(皮なし)を選ぶ
    • 付け合わせは、フライドポテトではなく温野菜や蒸し野菜に変更できないか確認
    • ソースやグレイビーは控えめに
  4. 飲み物の選択
    • アルコールは適量に
    • 炭酸飲料やジュースよりも水や無糖のお茶を選ぶ
    • 食事の前に水を飲むと、食べる量を自然と減らせる

料理ジャンル別のヒント

和食

  • 刺身、焼き魚、茶碗蒸しなどがおすすめ
  • うどん、そばは汁を残す
  • 丼物や漬物は塩分が多いので注意
  • 醤油をつける量を控える

中華

  • 塩分・油分が多いので特に注意が必要
  • 点心(蒸し物)、八宝菜、素材の味を活かした料理を選ぶ
  • 麺類はスープを残す
  • 餃子や春巻きなどの揚げ物は控える

イタリアン

  • オリーブオイルベースのパスタ(ペペロンチーノなど)
  • トマトソースは比較的ヘルシー(クリームソースは脂質が多い)
  • ピザはチーズを控えめにしてもらう
  • 前菜は生ハムや塩漬け食品より、カプレーゼやマリネを選ぶ

ファストフード

  • 基本的には避けるのが望ましいが、利用する場合は:
  • ハンバーガーよりもグリルチキンサンドイッチ
  • フライドポテトはサイズダウンまたはサラダに変更
  • ドレッシングやマヨネーズは控えめに

外食メニューの塩分を減らすコツ

外食メニューは既に調理されているため、完全に塩分をコントロールすることは難しいですが、以下のコツを試してみてください。

テーブルでできる工夫

  • 醤油やソースをかける前に一口食べてみる(案外薄味で美味しいことも)
  • 塩辛い部分を取り除く(焼き魚の表面、チャーハンの炒め野菜など)
  • レモンや酢を追加して、塩味を和らげる
  • 温かい汁物はレモンやビネガーを少し加えると塩味を抑えられる
  • 塩分の多い料理と野菜を一緒に食べる

メニューの組み合わせ

  • 塩分の高いメインには、塩分の少ないサイドメニューを
  • 麺類の汁や鍋の出汁は飲まない
  • ごはんものと麺類の組み合わせは避ける
  • デザートは果物など自然の甘みを活かしたものを選ぶ

飲み方の工夫

  • こまめに水を飲む(体内の塩分濃度を薄める効果)
  • アルコールを飲む際は水も一緒に
  • 炭酸水で喉の渇きを満たす(塩辛いものを食べたくなるのを防ぐ)

支払い後の対策

  • 塩分の多い食事をとった日は、翌日の食事で塩分を控える
  • 外食後はカリウム豊富な果物(バナナなど)を食べる
  • 水をたくさん飲んで、余分な塩分を排出する

機能性表示食品・サプリメントと血圧

科学的に効果が認められている成分

高血圧に効果があるとされる成分はいくつかありますが、科学的根拠の強さは様々です。以下では、比較的エビデンスの確かな成分を紹介します。

GABA(γ-アミノ酪酸)

  • 効果: 血圧上昇を抑制する作用
  • 含有食品: 発芽玄米、トマト、なす、GABA含有茶
  • 機能性表示: 「血圧が高めの方に」など
  • エビデンスレベル: 中程度
  • 摂取量目標: 12〜20mg/日程度

乳酸菌由来のトリペプチド(IPP、VPP)

  • 効果: ACE阻害作用(アンジオテンシン変換酵素の働きを抑える)
  • 含有食品: 特定の乳酸菌発酵食品、機能性表示食品の発酵乳製品
  • 機能性表示: 「血圧が高めの方に適した」など
  • エビデンスレベル: 比較的高い
  • 摂取量目標: IPP 1.5〜3.4mg/日程度

カカオポリフェノール

  • 効果: 血管内皮機能を改善し、血管を拡張させる
  • 含有食品: 高カカオチョコレート(カカオ70%以上)
  • 機能性表示: 「血管の柔軟性を維持する」など
  • エビデンスレベル: 中程度
  • 摂取量目標: 200〜400mg/日程度(チョコレート約10g)

DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)

  • 効果: 血管の炎症を抑制し、血管を拡張させる
  • 含有食品: 青魚、魚油サプリメント
  • 機能性表示: 「血中中性脂肪を下げる」など
  • エビデンスレベル: 比較的高い
  • 摂取量目標: DHA・EPA合計で1,000mg/日程度

クロロゲン酸

  • 効果: 抗酸化作用、血管拡張効果
  • 含有食品: コーヒー、ごぼう、じゃがいも
  • 機能性表示: 「血圧が高めの方に適した」など
  • エビデンスレベル: 中程度
  • 摂取量目標: 270〜300mg/日程度

ナットウキナーゼ

  • 効果: 血液をサラサラにする作用
  • 含有食品: 納豆
  • 機能性表示: 一部の製品で「血圧が高めの方に」
  • エビデンスレベル: 限定的
  • 摂取量目標: 2,000FU(フィブリン分解単位)/日程度

サプリメントの限界と正しい使い方

サプリメントや機能性表示食品は、あくまで食事や生活習慣の改善を補助するものであり、それだけで高血圧を改善できるわけではありません。以下のポイントを理解して、正しく利用しましょう。

サプリメントの限界

  • 食品から栄養素を摂取するほうが吸収率が高いことが多い
  • 単一成分の効果より、バランスの良い食事のほうが総合的な効果がある
  • 個人差があり、誰にでも同じ効果があるわけではない
  • 高額なサプリメントが必ずしも効果が高いとは限らない
  • 薬との相互作用がある場合がある

服用中の降圧薬との相互作用に注意

  • 特に注意が必要なのは以下の成分:
    • セントジョーンズワート: 多くの薬の効果を弱める
    • リコリス(甘草): 利尿薬と併用すると低カリウム血症のリスク
    • 高用量のビタミンK: ワーファリン(抗凝固薬)の効果を弱める
    • ナットウキナーゼ: 抗凝固薬との併用で出血リスク増加
  • サプリメントを始める前に、必ず主治医に相談する

正しいサプリメントの選び方

  1. 信頼できるメーカーを選ぶ
    • 第三者機関による品質検査を受けているもの
    • 成分表示が明確なもの
    • 過度な効能をうたっていないもの
  2. 自分に合ったものを選ぶ
    • 血液検査などで不足している栄養素がわかれば、それを補う
    • アレルギーや持病に配慮した成分のもの
    • 飲み続けられる価格帯のもの
  3. 適切な用量を守る
    • 推奨量を超えて摂取しない
    • 「多ければ良い」わけではない
    • 定期的に効果を評価する

機能性表示食品の見方

  • 「機能性表示食品」のマークを確認
  • パッケージ裏面の「届出表示」を読む
  • 摂取目安量や注意事項をチェック
  • 効果の根拠となる研究の質を調べる(消費者庁のデータベースで確認可能)

サプリメントよりも優先すべきこと

  1. バランスの良い食事
  2. 適度な運動習慣
  3. 禁煙・節酒
  4. 適正体重の維持
  5. ストレス管理
  6. 十分な睡眠

サプリメントはこれらの基本的な生活習慣の土台があって初めて効果を発揮します。まずは食事と生活習慣の改善に取り組み、それでも不十分な部分を補うためにサプリメントを検討するとよいでしょう。

まとめ

高血圧の管理において、食事は薬と同等かそれ以上に重要な役割を果たします。この記事のポイントを振り返ってみましょう。

食事管理のキーポイント

  • 塩分摂取を1日6g未満に抑える
  • カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの栄養素を意識的に摂る
  • 野菜、果物、全粒穀物、魚、大豆製品を中心とした食事にする
  • 加工食品、高脂肪食品、過剰な糖質摂取を避ける
  • DASH食の考え方を取り入れる

外食時のポイント

  • 調理法や味付けの調整をリクエストする
  • メニューの選び方を工夫する
  • テーブルでの小さな工夫が効果的
  • 外食後のフォローも大切

サプリメントの活用

  • 科学的根拠のある成分を選ぶ
  • 薬との相互作用に注意
  • あくまで食事改善の補助と考える

高血圧の食事管理は「我慢の連続」と思われがちですが、減塩調味料や香辛料を上手に活用したり、新しい調理法を試したりすることで、美味しさと健康を両立することが可能です。まずは小さな変化から始めて、徐々に理想的な食習慣に近づけていきましょう。

次回は「高血圧の薬|降圧薬の種類・効果・副作用と上手な付き合い方」について解説します。食事管理と適切な薬物療法を組み合わせることで、より効果的に血圧をコントロールできるようになるでしょう。

参考文献

  1. 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2024. 日本高血圧学会, 2024.
  2. Sacks FM, et al. Effects on blood pressure of reduced dietary sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet. N Engl J Med. 2001;344(1):3-10.
  3. Whelton PK, et al. 2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults. J Am Coll Cardiol. 2018;71(19):e127-e248.
  4. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). 厚生労働省, 2020.
  5. 消費者庁. 機能性表示食品の科学的根拠に関する資料. 消費者庁, 2024.
  6. Stamler J, et al. INTERMAP: background, aims, design, methods, and descriptive statistics (nondietary). J Hum Hypertens. 2003;17(9):591-608.

監修

山須田彬 高血圧といびきの内科 神保町駅前 院長

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