いびき・睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, 以下SAS)とは、睡眠中に何度も息が止まる病気です。

原因は肥満が多いですが、耳鼻科疾患(扁桃肥大、鼻中隔弯曲、鼻炎)や解剖学的理由(小さいあご、後退したあご、大きな舌など)も関係します。したがって、肥満のある方に限らず、どんな体形のひとであってもありえる病気です。例えば、小顔の女性でも注意が必要です。

主な症状は、いびき、中途覚醒、夜間頻尿、起床時の頭痛、日中の眠気です。

有病率は男性9%、女性3%程度と言われています。患者は40~50歳代の男性が主で、女性は閉経後に増加します。

SAS、なぜ治療が必要?

SASは高血圧、脳卒中、心筋梗塞を引き起こす危険性が約3~4倍高くなります。他にも糖尿病や脂質異常症、慢性腎臓病、うつ病、認知症、不妊症、EDをしばしば合併します。また、日中の眠気は作業効率の低下や居眠り運転事故、高所転落などの労働災害の原因にもなります。

SASの治療することにより、これらの危険性を健常人と同等に低下させることが可能です。そのため当院では、いびきのある患者様に対して検査と治療を推奨しています。

検査と診断


JESS問診票にて日中の眠気を評価します。合計11点以上の方は検査推奨です。

SASの検査には、簡易検査と精密検査(ポリソムノグラフィー, PSG)の2種があります。まず初めに簡易検査を行い、その結果に応じて精密検査を行います。

当院では、簡易検査・精密検査ともにご自宅で実施することが可能です(保険適用あり)。入院検査より安価な上、仕事等で忙しい方でも検査ができます。2週間ほどで解析結果が出ます。

簡易検査機器
精密検査機器


検査結果のうち、1時間あたりの無呼吸と低呼吸をあわせた回数(無呼吸低呼吸指数、AHI)がSASの診断および重症度判定において重要な指標となります。精密検査でAHIが5以上、かつ有症状の場合SASと診断します。AHIの値をもとに、軽症(5~15)、中等症(15~30)、重症(30以上)に分類します。

診断フローチャート

治療法 (CPAP治療)

簡易検査にて無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index, AHI)が40以上、または精密検査にてAHIが20以上のSASでは、持続的陽圧呼吸療法(CPAP)が標準的治療です。

CPAPは睡眠中にマスクを着用し、適切な圧で持続的に空気を送り込む呼吸療法です。近年のCPAP装置は小型・静音・加湿機能付と快適性が向上しています。CPAP治療はほぼ副作用がなく、継続することでSASの症状改善および合併症の予防効果を得ることが可能です。

費用について

・簡易検査     2,700円/回

・精密検査    11,250円/回

・C-PAP治療   約4,000円/月

その他の治療法

軽症のSASに対しては、下あごを前方に移動させるマウスピース矯正が有効な場合があります(ご希望に応じて、治療可能な歯科をご紹介いたします)。

その他、鼻中隔弯曲症に対する鼻中隔矯正術や、小児SASに対する扁桃摘出術が適切なケースもあります。

UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)やLAUP(レーザー口蓋垂軟口蓋形成術)に関しましては、有効性と侵襲性を勘案し特におすすめはしておりません。もしご検討の際は、医療機関からの十分な説明を受け納得の上で治療を受けるべきかと思います。

SASを改善する生活習慣

肥満(BMI≧25)の患者様にはダイエットを推奨します。(当クリニックでは、減量に効果的なサプリメント・漢方・医薬品を取り揃えております)

あお向けで寝ると無呼吸が悪化することが多いので、横向き寝が良いです。横向き寝ができる枕やクッションを準備して睡眠環境を整えると良いでしょう。

飲酒や睡眠薬は、筋肉がゆるみ気道が狭くなる結果、無呼吸を悪化させます。できれば避けるのが望ましいです。

適度な運動は、ダイエット効果以外にも様々な健康増進効果があります。散歩やストレッチ等、軽負荷で継続可能な運動から始めましょう。

医師より患者様へメッセージ

いびきや日中の眠気が気になりましたら、当院へご相談ください。当院は在宅検査(入院検査不要)でSASの診断が可能です。CPAP治療のほか、合併症に対する内科的治療、生活習慣のアドバイス、必要に応じて他科紹介も行っております。

健康診断の結果や他院での検査結果がありましたら、お手数ですがご持参ください。

患者様ひとりひとりに適切な治療を提案できるよう、丁寧にお話させていただきます。お気軽にご相談いただけましたら幸いです。

上記症状やリスクチェックに当てはまる方は、当院へご相談ください

最新の研究結果

睡眠時無呼吸症候群やCPAP療法の科学的なエビデンスについてご紹介します。

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群と肥満に対するチルゼパチドの有効性「Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity」
Published June 21, 2024  N Engl J Med 2024;391:1193-1205  DOI: 10.1056/NEJMoa2404881
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2404881
カリフォルニア大学のAtul Malhotraらの研究(2022年6月~2024年3月SURMOUNT-OSA)。中等症~重症OSASの肥満成人469名を対象に、2つの第3相二重盲検ランダム化比較試験を行った。試験1では陽圧換気療法を受けていない参加者、試験2では陽圧換気療法ありの参加者を対象とした。最大耐量のチルゼパチド(マンジャロ)10mgまたは15mg群とプラセボ群に分け、52週投与し比較した。エンドポイントはAHI(無呼吸低呼吸指数)、体重の変化率、低酸素負荷、患者報告による睡眠障害の程度、hsCRP(高感度CRP)、収縮期血圧の変化であった。
患者:試験1は参加者234名、平均年齢48歳、男性67%女性33%。試験2は参加者235名、平均年齢52歳、男性72%女性28%。
   AHIは15回/時以上、平均50回/時。BMIは30以上、平均39。糖尿病患者は除外した。
結果:ベースラインのAHIは試験1で51.5回/時、試験2で49.5回/時。BMIは試験1で39.1、試験2で38.7。
   試験1では、チルゼパチド投与群でAHI-25.3回/時、プラセボ群で-5.3回/時、推定治療差は-20回/時であった(p<0.001)
試験2では、チルゼパチド投与群でAHI-29.3回/時、プラセボ群で-5.5回/時、推定治療差は-23.8回/時であった(p<0.001)
   全ての主要・副次評価項目において、チルゼパチドはプラセボと比較して有意な改善を示した。
   チルゼパチドで最も多く報告された有害事象は消化器症状(下痢・嘔気・嘔吐・便秘)で、そのほとんどが軽度~中等症であった。
結論:中等症~重症のOSAS肥満患者において、チルゼパチド(マンジャロ)はAHI・体重・低酸素負荷・hsCRP濃度、収縮期血圧を減少させ、患者報告による睡眠障害の程度を改善した。
コメント:チルゼパチドの減量効果およびOSAS治療における減量の重要性を示す結果かと思います。
     より長期の場合の結果や他のアウトカムも気になるところです。

・高齢者の閉塞性睡眠時無呼吸症候群における気道陽圧療法と死亡・脳心血管系疾患リスクの関係「Positive Airway Pressure, Mortality, and Cardiovascular Risk in Older Adults With Sleep Apnea」
JAMA Netw Open. 2024;7(9):e2432468. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.32468
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2823539?resultClick=1
カンザス大学メディカルセンターDiego R. Mazzottiらの研究。高齢OSAS患者における気道陽圧療法(PAP)と死亡率・脳心血管系疾患発症率との関係性についてレトロスペクティブコホート研究を行った。
参加者:2011~2020年の米国約88万人の高齢OSAS患者。年齢中央値73歳、女性43.9%。人種はアジア人0.9%黒人5.3%白人85.5%。PAP治療者は32.6%。
主要評価項目:全死亡率および脳心血管系イベント発症率
結果:全体の5年間の累積死亡率/累積脳心血管系疾患発生率は20.5%/41.0%であった。うち、PAP治療群の累積死亡率/累積脳心血管系疾患発生率は12.4%/27.4%であるのに対し、非PAP治療群は17.7%/30.7%であった。PAP治療群は非PAP治療群と比較して、全死亡リスク(HR0.53 95%CI 0.52-0.54)および脳心血管系疾患リスク(HR0.90 95%CI 0.89-0.91)が有意に低かった。この傾向は、PAPの利用率が高いほど死亡率・脳心血管系疾患発症率が低かった。
結論:高齢OSAS患者において、気道陽圧療法は全死亡率および脳心血管系疾患発症率を低下させることが示唆された。

・CPAP療法アドヒアランスと脳心血管系疾患再発リスクの関係 メタ分析「Adherence to CPAP Treatment and the Risk of Recurrent Cardiovascular Events A Meta-Analysis」
JAMA. 2023;330(13):1255-1265. doi:10.1001/jama.2023.17465
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2810031?resultClick=1
スペインCIBERESのManuel Sánchez-de-la-Torreらの研究。OSASに対するCPAP療法の有効性を検証する目的で、OSAS患者の脳心血管系イベントおよび死亡率に対するCPAP治療の効果を解析した3件のRCTについてメタ分析を行った(n=4186)。
患者は男性82.1%、平均BMI28.9、平均年齢61.2歳、平均AHI31.2、高血圧71%、CPAP使用者50.1%(平均使用時間3.1時間/日)、CPAP非使用者49.9%、平均追跡期間3.25年であった。主要評価項目である初回の脳心血管イベントリスクについては、CPAP群と非CPAP群で同様であったものの(CPAP群349件、非CPAP群342件、ハザード比1.01、95%CI:0.87-1.17)、CPAP療法のアドヒアランスが良好(4時間/日以上使用)であれば脳心血管系イベントリスクが低下することが明らかになった(ハザード比0.69、95%CI:0.52-0.92)
コメント:CPAP治療は導入するだけではなく、少なくとも1日4時間は装着する必要がありそうです。またCPAPの予防効果に否定的な研究に関しては、アドヒアランスを念頭に考える必要があると感じます。

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群における客観的睡眠時間と全死亡率の関係「Objective Sleep Duration and All-Cause Mortality Among People With Obstructive Sleep Apnea」
JAMA Netw Open. 2023;6(12):e2346085. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.46085
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2812565?resultClick=1
福建省病院スリープセンターYiqi Linらの研究。OSASにおける睡眠時間と全死亡率との関係性を調査するコホート研究。対象は1995年~1998年にアンケート調査およびPSGで登録され、平均11.8年追跡されたOSAS患者2574人。ベースラインのPSGによる睡眠時間に基づき、客観的な睡眠時間が(1)7時間以上(2)6~7時間(3)5~6時間(4)5時間未満の4グループに分類し統計分析を行った。
結果:OSAS患者2574名、うち男性63.2%女性36.8%。平均年齢65.4歳、黒人8.2%白人86.6%その他5.2%。全死亡者数688名。(1)7時間以上睡眠したグループと比較し、(2)6~7時間睡眠のグループの全死亡リスクHR1.53(95%CI 1.13~2.07)、(3)5~6時間睡眠のグループの全死亡リスクHR1.40(95%CI 1.03~1.90)、(4)5時間未満睡眠のグループの全死亡リスクHR1.64(95%CI 1.20~2.24)であった。
結論:OSASにおいて、客観的な睡眠時間が7時間以上の患者は、7時間未満の患者と比較して全死亡率が有意に低かった。
    
・いびきと軽度睡眠呼吸障害のある小児に対する扁桃摘出術「Adenotonsillectomy for Snoring and Mild Sleep Apnea in Children A Randomized Clinical Trial」
JAMA. 2023;330(21):2084-2095. doi:10.1001/jama.2023.22114
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2812479?resultClick=1
ハーバード大学Susan Redlineらの研究。いびきのある軽度睡眠時無呼吸の小児を対象に、早期扁桃摘出術群と12ヶ月経過観察群の比較によるRCTを行った。
参加者:2016年6月から2021年2月の間、米国7か所のアカデミックスリープセンターにおけるいびきがありAHIが3未満の小児459名(3歳~12.9歳)。扁桃摘出術群(n=231)と経過観察群(n=228)に無作為に割り付けた。
評価基準:主要評価項目は、Global Executive Composite(GEC)Tスコア(遂行機能の指標)・Go/No-go(GNG)テストのd-prime信号検出スコアの変化である。副次評価項目は、神経発達・行動・QOL・睡眠・健康に関する22項目であった。
結果:分析サンプルの参加者458名(扁桃摘出群231名、経過観察群227名。平均年齢6.1歳、AHI中央値0.5)
Global Executive Composite(GEC)Tスコア 扁桃摘出術群-3.1 vs 経過観察群-1.9 差-0.96[95%CI -2.66~0.74]
Go/No-go(GNG)テストのd-prime信号検出スコア 扁桃摘出群0.2 vs 経過観察群0.1 差0.05[95%CI -0.18~0.27]
→主要評価項目2つとも統計的に有意差なしという結果。
   副次評価項目:問題行動、眠気、症状、QOL・血圧は扁桃摘出群が経過観察群より改善。
   
結論:軽度睡眠呼吸障害の小児に対する早期扁桃摘出術群は経過観察群と比較して遂行機能や注意力には有意差なし。問題行動・症状・日中の眠気・QOL・血圧に改善が見られた。

・10分間の口腔咽頭運動が無呼吸低呼吸指数に与える影響「Effect of 10-minute oropharyngeal exercise on the apnoea–hypopnoea index」
Sci Rep 14 , 28645 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-79884-0
神戸大学呼吸器内科Tatsuya Naganoらの研究。1日10分の口腔咽頭運動プログラムを作成し、その有効性を評価した。
参加者はAHIが5以上のOSAS患者25名で、年齢は18歳~65歳までの日本人。全員が日本交通株式会社に勤務する運転手。
プログラム内容は、1日1回10分間、12週間にわたって実施した。時間は午前または深夜に実施。

①舌回し運動を20回、合計60秒

②舌を持ち上げる運動を20回、合計60秒

③軟口蓋を持ち上げる運動を30回、合計90秒

④舌を押し下げる運動20回、合計60秒

⑤舌を右に回す運動15回、合計45秒

⑥舌を左に回す運動15回、合計45秒

⑦口を閉じて頬を吸引したり膨らませたりする運動

⑧天井を見上げて、舌を突き出す運動合計60回

⑨唾液を口の中に貯めて、舌を唇で挟みながら飲む動作10回合計60秒

⑩天井を見上げて、唇をすぼめて5秒維持する動作を10回合計60秒 を行った。


評価項目:プログラム12週実施後のAHI、舌圧、口唇閉鎖圧、いびき、Mallampatiスコアを評価した。
結果:解析対象は21名。プログラム開始前のAHI≧30の患者はAHIの有意な改善を認めなかったが、プログラム開始前のAHIが5~30の患者では平均AHI20.9→16.9に改善が見られた(p=0.0317)。AHI改善群は若年の傾向があった。舌圧およびいびきは有意に改善しなかったが、口唇閉鎖圧は増加傾向が見られた。参加者の77.2%でMallampatiスコアの改善が認められた。
結論:この新しい口腔咽頭運動プログラムは、AHI30未満の若いSAS患者に適している可能性がある。

・閉塞性睡眠時無呼吸の日中の眠気に対する覚醒促進薬の有効性および安全性の比較:系統的レビューとネットワークメタ分析「Comparative Efficacy and Safety of Wakefulness-Promoting Agents for Excessive Daytime Sleepiness in Patients With Obstructive Sleep Apnea : A Systematic Review and Network Meta-analysis」
PMID: 37155992 DOI: 10.7326/M22-3473
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37155992/
カナダのマクマスター大学Tyler Pitreらの研究。OSAS患者に見られる日中の眠気に対する覚醒促進薬の有効性をネットワークメタ分析により評価した。データソースは2022年11月7日までのMEDLINE、CENTRAL、EMBASE、ClinicalTrials.govから抽出。
OSAS患者3085名に対して調査を行った。ソルリアムフェトール、アルモダフィニル-モダフィニル、ピトリサントの3剤について4週投与時点でプラセボと比較。
ESSスコア:ソルリアムフェトールはESSスコアを改善(-3.85 95%CI -5.24~-2.50)。アルモダフィニル-モダフィニルとピトリサントはESSスコアを改善する可能性(それぞれ、-2.25 95%CI -2.85~-1.64、-2.78 95%CI -4.03~-1.51)。
NWT:ソルリアムフェトール、アルモダフィニル-モダフィニルはNWTを改善する(それぞれ、SMD 0.9 CI 0.64~1.17、SMD 0.41 CI0.27~0.55)。ピトリサントは改善する可能性は低い。
有害事象による中止リスク:アルモダフィニル-モダフィニルは中止リスクを増加させる(RR2.01 CI1.14~3.51)
             ソルフィアムフェトールは中止リスクを増加させる恐れがある(RR2.01 CI0.67~6.25)
結論:ソルリアムフェトール、アルモダフィニル-モダフィニル、ピトリサントの3剤ともOSASの日中の眠気を軽減する。3剤の中では、ソルリアムフェトールが優位の可能性がある。
・SHARP研究の結果 日中の眠気と認知機能障害を伴うOSASにおける覚醒促進剤ソルリアムフェトールの効果を検証する第Ⅳ相臨床試験「Results of the SHARP Study: A Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind, Repeated-Measures, Crossover, Phase IV Clinical Trial of the Effect of the Wake-Promoting Agent Solriamfetol on Cognitive Function in Obstructive Sleep Apnea With Excessive Daytime Sleepiness and Cognitive Impairment」
PMID: 39528111 DOI: 10.1016/j.chest.2024.10.050
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012369224054709
Hans P A Van Dongenらの報告(SHARP study)。
ソルリアムフェトールがOSASおよび日中の眠気に関連する認知障害にどのような影響を与えるかを検証する第Ⅳ相ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験が行われた。
参加者59名はプラセボ群、ソルフィアムフェトール(75mg/日を3日間、その後150mg/日)群に割り付けされ、1週間のウォッシュアウトをはさんでクロスオーバーが行われた。
有効性の評価には、DSST BRAINS(神経心理学的状態の評価のための反復バッテリースコア)、ブリティッシュコロンビア認知障害評価尺度 (BC-CCI)、患者の全般的印象変化 (PGI-S)、およびエプワース眠気尺度 (ESS) が用いられた。主要評価項目は薬剤投与後のDSST BRAINS平均スコアのベースラインからの変化、副次評価項目は投与後2、4、6、8時間におけるBC-CCI、PGI-S、ESS、DSST RBANSスコアのベースラインからの変化とした。
結果:ソルリアムフェトールは、プラセボと比較して投与後のDSST BRAINS平均スコアを有意に改善した。(p=0.009)
   各タイムポイントでの評価は、投与後2時間、6時間、8時間で認知機能が有意に改善した。(p<0.05)
BC-CCI、PGI-S、ESSに関してもプラセボと比較して有意に改善した。
   主な有害事象は、嘔気(7%)、不安(3%)であった。
結論:SHARP Studyは、ソルリアムフェトールがOSASの日中の眠気を伴う認知機能障害を有する患者において、認知機能を主観的・客観的に改善できることを実証した。