高血圧に効く漢方 その②

その①では釣藤散と七物降下湯についてご紹介しました。その②では、その他の薬として瀉心湯類、柴胡剤、駆瘀血剤、補腎薬についてご紹介します。

(4)瀉心湯類

胃のつかえ=心下痞がある高血圧には、瀉心湯類を使用することがあります。

顔が赤くのぼせて舌が赤く時に鼻出血を伴い、イライラや不眠など精神症状がある、身体にこもった熱に対しては黄連解毒湯を使用します。便秘を伴う場合は頓服で三黄瀉心湯を使用する場合もあります。

虚証~中間症向けの処方として半夏瀉心湯もありますが、高血圧ではなく胃腸炎・口内炎・ストレス性胃炎・下痢型過敏性腸症候群の症状に使用されるケースが多いです。

黄連解毒湯…出典:外台秘要方 生薬:黄連・黄芩・黄柏・山梔子

三黄瀉心湯…出典:金匱要略 生薬:黄連・黄芩・大黄

半夏瀉心湯…出典:傷寒論/金匱要略 生薬:半夏、人参、乾姜、甘草、大棗、黄芩、黄連

(5)柴胡剤

気滞や胸脇苦満がある高血圧には柴胡剤を使用することがあります。

メタボ体質で便秘がちの方には大柴胡湯、不安・不眠・イライラなど精神症状がある方には柴胡加竜骨牡蛎湯が向きます。

大柴胡湯…出典:傷寒論/金匱要略 生薬:柴胡・黄芩・半夏・芍薬・大棗・枳実・生姜・大黄

柴胡加竜骨牡蛎湯…出典:傷寒論 生薬:柴胡・黄芩・人参・半夏・生姜・大棗・竜骨・牡蠣・桂枝・茯苓・大黄(※ツムラは大黄なし)

(6)駆瘀血剤

瘀血=微小循環障害を伴う高血圧には駆瘀血剤を使用することがあります。

瘀血のサインは、肩こり・頭痛・手足の冷え・肌の黒ずみやシミ・月経異常などで、舌下静脈の怒張や臍傍圧痛、左下腹部圧痛などを伴う場合があります。

基本処方は桂枝茯苓丸です。顔が丸くて赤みがあり、下腹部に抵抗圧痛がある方に適します。特に女性で便秘傾向があれば桃核承気湯、血虚傾向には当帰芍薬散を選択します。

桂枝茯苓丸…出典:金匱要略 生薬:桂皮・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬

桃核承気湯…出典:傷寒論 生薬:桃仁・桂皮・大黄・甘草・芒硝

当帰芍薬散…出典:金匱要略 生薬:当帰・芍薬・茯苓・蒼朮・沢瀉・川芎

(7)補腎剤

腎虚(先天あるいは老化に伴う内分泌の衰退)を伴う高血圧には補腎剤を使用することがあります。腎陰虚と腎陽虚がありますがあくまで相対的なもので、どちらがより衰えているかで判断します。

腎陰虚は皮膚が乾燥し、のぼせ、疲れ目、難聴、耳鳴、白髪、健忘など症状を呈した状態で、六味丸が適します。腎陽虚は冷え、腰痛、下肢の筋力低下、夜間頻尿が主な症状で、八味地黄丸が適します。利水作用を加えた牛車腎気丸も使用されることがあります。

補腎剤は地黄が胃もたれを起こしやすく、胃弱の方には向きません。効果が出るまでにかなりの時間を要します。

六味丸…出典:小児薬証直訣 生薬:地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮

八味地黄丸…出典:金匱要略 生薬:地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂皮・附子

高血圧治療で漢方をご希望の方は、ぜひ当院までご相談ください。

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