『① 高血圧とは?診断基準・原因・症状・リスクを医師が解説』

目次

はじめに

こんにちは、院長の山須田です。皆さんは自分の血圧値をご存知ですか?日本人の約4,300万人が高血圧と言われており、実に3人に1人が該当すると言われています。しかし、自覚症状が乏しいため「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれる高血圧。放置すると重大な病気を引き起こすリスクがあります。

この記事では、高血圧の長年診療に携わってきた経験から、高血圧の基礎知識から最新の診断基準、原因、症状、リスクまで徹底解説します。あなたやご家族の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

目次

  1. 高血圧とは?定義と診断基準
    • 高血圧の診断基準(2024年最新版)
    • 年齢別の血圧正常値
  2. 高血圧の原因とは?
    • 遺伝・生活習慣・加齢の影響
    • 食生活と高血圧(塩分・脂質・糖質の関係)
    • ストレス・睡眠不足・喫煙・アルコール
  3. 二次性高血圧とは?
    • 原因疾患(腎疾患、内分泌疾患など)
    • 一次性高血圧との違い
  4. 高血圧の症状とリスク
    • 初期症状はある?サイレントキラーの怖さ
    • 高血圧が引き起こす病気(脳卒中・心疾患・腎疾患)
    • 高血圧緊急症について
  5. 家庭での血圧測定の重要性
    • 正しい測り方とおすすめの時間帯
    • 白衣高血圧・仮面高血圧とは?

高血圧とは?定義と診断基準

高血圧とは、血管の中を流れる血液が血管壁を押す力(血圧)が慢性的に高い状態を指します。血圧は上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の2つの数値で表されます。

  • 収縮期血圧:心臓が収縮して血液を送り出すときの血圧
  • 拡張期血圧:心臓が拡張して血液を取り込むときの血圧

高血圧の診断基準(2024年最新版)

2024年現在、日本高血圧学会のガイドラインによると、診察室血圧での高血圧の診断基準は以下の通りです。

分類収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧130 mmHg未満かつ 85 mmHg未満
正常高値血圧130-139 mmHgまたは 85-89 mmHg
I度高血圧140-159 mmHgまたは 90-99 mmHg
II度高血圧160-179 mmHgまたは 100-109 mmHg
III度高血圧180 mmHg以上または 110 mmHg以上

一方、家庭血圧での高血圧の基準値は診察室よりも低く設定されています。

測定場所高血圧の基準値
診察室血圧140/90 mmHg以上
家庭血圧135/85 mmHg以上
24時間平均血圧130/80 mmHg以上
昼間平均血圧135/85 mmHg以上
夜間平均血圧120/70 mmHg以上

※最新のガイドラインでは、より低い血圧でも心血管リスクが高まることが示されており、生活習慣の改善は130/80mmHg以上から推奨されています。

年齢別の血圧正常値

加齢に伴い血圧は上昇する傾向にありますが、高齢者だからといって高血圧が「正常」というわけではありません。年齢別の目標血圧値は以下の通りです。

年齢一般的な目標血圧(診察室)
75歳未満130/80 mmHg未満
75歳以上140/90 mmHg未満

ただし、個人の状態(糖尿病や腎臓病の有無など)によって目標値は変わりますので、主治医と相談して決めることが大切です。

高血圧の原因とは?

高血圧の原因は大きく分けて「一次性(本態性)高血圧」と「二次性高血圧」に分類されます。90〜95%は一次性高血圧で、明確な原因が特定できないものです。

遺伝・生活習慣・加齢の影響

高血圧には様々な要因が複合的に関わっています。

遺伝的要因

  • 両親が高血圧の場合、子供が高血圧になるリスクは約2倍に増加します
  • 特定の遺伝子変異が血圧調節に影響を与えることがわかっています

加齢の影響

  • 加齢に伴い血管の弾力性が低下し、動脈硬化が進行します
  • 腎臓の機能も加齢とともに低下するため、塩分排出能力が減少します

人種・民族

  • 日本人を含むアジア人は塩分感受性が高く、塩分摂取の影響を受けやすいとされています

食生活と高血圧(塩分・脂質・糖質の関係)

食習慣は高血圧と深い関わりがあります。

塩分(ナトリウム)

  • 日本人の平均塩分摂取量は約10g/日で、推奨量(6g/日未満)を大きく上回っています
  • 塩分の過剰摂取は血液量を増やし、血管への負担を増大させます

カリウム

  • カリウムはナトリウムの排出を促進する作用があります
  • 野菜や果物に多く含まれ、摂取量が少ないと高血圧リスクが高まります

脂質

  • 飽和脂肪酸の多い食品(肉の脂身、バターなど)の過剰摂取は血圧上昇につながります
  • 一方、オメガ3脂肪酸(青魚に多い)には血圧を下げる効果があります

糖質

  • 過剰な糖質摂取は肥満を招き、インスリン抵抗性を高めることで高血圧リスクを増加させます

ストレス・睡眠不足・喫煙・アルコール

生活習慣も高血圧に大きく影響します。

ストレス

  • ストレスを感じると交感神経が活性化し、一時的に血圧が上昇します
  • 慢性的なストレスは持続的な血圧上昇につながります

睡眠不足

  • 質の悪い睡眠や睡眠時間の不足は血圧調節機能を阻害します
  • 特に睡眠時無呼吸症候群は高血圧と強く関連しています

喫煙

  • タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させます
  • 喫煙者は非喫煙者に比べて高血圧のリスクが約1.5倍高くなります

アルコール

  • 日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイン1/4本程度までなら血圧への影響は小さいとされています
  • それ以上の量では血圧上昇リスクが高まります

二次性高血圧とは?

高血圧患者の約5~10%は、明確な原因疾患がある「二次性高血圧」です。若年発症の高血圧や治療抵抗性高血圧の場合、二次性高血圧を疑う必要があります。

原因疾患(腎疾患、内分泌疾患など)

腎疾患

  • 腎実質疾患(慢性腎臓病、糸球体腎炎など)
  • 腎血管性高血圧(腎動脈狭窄)
  • 多発性嚢胞腎

内分泌疾患

  • 原発性アルドステロン症
  • 褐色細胞腫
  • クッシング症候群
  • 甲状腺機能亢進症・低下症
  • 副甲状腺機能亢進症

薬剤性

  • 経口避妊薬
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • ステロイド
  • 一部の漢方薬
  • 麻薬(コカインなど)

その他

  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 大動脈縮窄症

一次性高血圧との違い

二次性高血圧は、以下のような特徴を持つことが多いです。

特徴一次性高血圧二次性高血圧
発症年齢中年以降が多い若年者や高齢者に多い
血圧上昇緩徐に上昇急激に上昇することがある
治療反応性通常の治療に反応治療抵抗性のことが多い
特徴的な症状通常なし原因疾患による特徴的症状がある場合も

二次性高血圧が疑われる場合、内分泌検査や画像検査などの精密検査が必要となります。原因疾患の治療により血圧が正常化することも多いため、早期発見が重要です。

高血圧の症状とリスク

初期症状はある?サイレントキラーの怖さ

高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれるように、多くの場合、自覚症状がありません。そのため、定期的な健康診断や家庭での血圧測定が非常に重要です。

ただし、血圧が非常に高い場合には以下のような症状が現れることがあります:

  • 頭痛(特に後頭部)
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 鼻血
  • 動悸
  • 疲労感

これらの症状が現れた場合は、すでに血圧がかなり上昇している可能性があります。症状がなくても定期的に血圧を測定することが大切です。

高血圧が引き起こす病気(脳卒中・心疾患・腎疾患)

高血圧を放置すると、全身の血管に負担がかかり、様々な臓器障害を引き起こす可能性があります。

脳血管障害

  • 脳出血
  • 脳梗塞
  • 一過性脳虚血発作(TIA)

心臓疾患

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心不全
  • 心房細動
  • 左室肥大

腎臓疾患

  • 慢性腎臓病
  • 腎不全

眼疾患

  • 高血圧性網膜症
  • 視力障害

大血管疾患

  • 大動脈瘤
  • 大動脈解離
  • 末梢動脈疾患

高血圧は単独ではなく、糖尿病、脂質異常症、肥満などの他のリスク因子と合併することで、さらに心血管疾患のリスクを高めます。

高血圧緊急症について

血圧が急激に上昇し、臓器障害を伴う状態を「高血圧緊急症」と呼びます。以下のような症状を伴う場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。

高血圧緊急症の主な症状

  • 激しい頭痛
  • 意識障害
  • 視力障害
  • 激しい胸痛
  • 呼吸困難
  • けいれん

高血圧緊急症は、通常180/120mmHg以上の著しい血圧上昇に加え、以下のような臓器障害を伴います:

  • 高血圧性脳症
  • 急性心不全・肺水腫
  • 急性冠症候群(心筋梗塞など)
  • 大動脈解離
  • 子癇(妊娠高血圧症候群の重症型)

高血圧緊急症は命に関わる状態であり、集中治療室での迅速な降圧治療が必要です。

家庭での血圧測定の重要性

正しい測り方とおすすめの時間帯

家庭血圧の測定は、診察室では捉えられない血圧変動を知るために非常に重要です。正しい測定方法を身につけましょう。

正しい血圧測定の方法

  1. 測定前の準備
    • 測定前30分はカフェイン摂取や喫煙を避ける
    • 測定5分前には安静にする
    • 排尿を済ませておく
  2. 測定姿勢
    • 椅子に深く腰掛け、背もたれにもたれる
    • 足は組まず、床にしっかりつける
    • カフを巻いた腕は心臓の高さに保つ(テーブルの上に置くなど)
  3. 測定回数と記録
    • 1回の測定で2〜3回測り、平均値を記録する
    • 毎日の測定値を記録する(専用手帳やアプリが便利)

おすすめの測定時間帯

  • :起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前
  • :就寝前

この2つの時間帯で測定することで、朝晩の血圧差や薬の効果を把握できます。特に朝の血圧は心血管イベントと関連が強いことがわかっています。

白衣高血圧・仮面高血圧とは?

家庭血圧と診察室血圧には差がある場合があり、以下のようなパターンが存在します。

白衣高血圧

  • 診察室では血圧が高いが、家庭では正常
  • 全高血圧患者の約15〜30%を占める
  • 将来的に持続性高血圧に移行するリスクあり
  • 心血管リスクは正常血圧より高く、持続性高血圧より低い

仮面高血圧

  • 診察室では血圧が正常だが、家庭では高い
  • 全高血圧患者の約10〜15%を占める
  • 発見が難しいため、家庭血圧測定が重要
  • 心血管リスクは持続性高血圧と同程度に高い

どちらの状態も適切な診断には家庭血圧測定が不可欠です。これらを見逃さないためにも、定期的な家庭血圧測定と記録を習慣にしましょう。

高血圧の4分類

分類診察室血圧家庭血圧特徴
正常血圧正常正常心血管リスク低い
白衣高血圧高い正常将来的なリスクあり
仮面高血圧正常高い心血管リスクが高い
持続性高血圧高い高い心血管リスクが最も高い

まとめ

高血圧は自覚症状に乏しく、放置すると重大な合併症を引き起こす「サイレントキラー」です。しかし、早期発見と適切な管理によって多くの合併症を予防することができます。

  • 定期的な血圧測定を習慣にしましょう
  • 家庭血圧測定は朝と夜の2回実施するのが理想的です
  • 血圧が高い場合は、生活習慣の改善から始めましょう
  • 二次性高血圧が疑われる場合は、専門医による精査が必要です
  • 高血圧緊急症の症状が現れたら、すぐに医療機関を受診してください

この記事が皆さんの健康管理の一助となれば幸いです。次回は「高血圧と運動|血圧を下げるための正しい運動習慣」について解説します。

参考文献

  1. 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2024. 日本高血圧学会, 2024.
  2. Whelton PK, et al. 2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults. J Am Coll Cardiol. 2018;71(19):e127-e248.
  3. Williams B, et al. 2018 ESC/ESH Guidelines for the management of arterial hypertension. Eur Heart J. 2018;39(33):3021-3104.
  4. Umemura S, et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019). Hypertens Res. 2019;42:1235-1481.
  5. 厚生労働省. 国民健康・栄養調査報告(令和3年). 厚生労働省, 2022.

監修

山須田彬 高血圧といびきの内科 神保町駅前 院長

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