CPAP治療に関する新しい論文
こんにちは。高血圧といびきの内科神保町駅前 院長の山須田です。
今回は睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療に関する新しい論文(Lancet掲載、2025年3月18日)についてご紹介いたします。
PAP(気道陽圧)療法が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の全死亡率を37%、心血管疾患による死亡率を55%と大幅に低下させるという内容です。
「Positive airway pressure therapy and all‐cause and cardiovascular mortality in people with obstructive sleep apnoea: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and confounder-adjusted, non-randomised controlled studies」
Lancet Respiratory Medicine. Published March 18, 2025 DOI:10.1016/S2213-2600(25)00002-5.
「閉塞性睡眠時無呼吸における持続陽圧呼吸療法と全死亡率・心血管死亡率の関連:RCTおよび交絡因子調整済み無作為比較研究の系統的レビューとメタ解析」
1. イントロダクション
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、30〜69歳の成人で世界的に10億人が罹患していると推定されています。
睡眠中の上気道の反復的な閉塞により低酸素血症と睡眠の断片化を来し、それに伴って交感神経亢進、代謝異常、高血圧、心血管イベント、認知機能低下を引き起こします。
治療の第一選択はCPAP(Continuous Positive Airway Pressure持続陽圧呼吸療法)で、無呼吸低呼吸指数(AHI)の低下、日中の眠気の改善、QOLの向上など、多数の有効性が既に確認されています。一方、CPAPが全死亡率や心血管死亡率を本当に低下させるかについては、RCT(無作為化比較試験)と観察研究で結果に食い違いがあり、この矛盾を解消すべく最大規模の系統的レビューとメタ解析を行いCPAPがOSA患者の全死亡・心血管死亡に与える影響を検証しました。
2. 研究目的と方法
目的:OSA患者に対するCPAP療法が全死亡率および心血管死亡率を有意に低下させるかを検証しました。
デザイン:RCTおよび交絡因子調整済み無作為比較研究(NRCS)の系統的レビューとメタ解析
成人OSA患者(18歳以上)でCPAP治療の有無による比較が行われた研究を対象としました。
PAPのアドヒアランスのみを検討した研究、PAP以外の治療法は除外しています。
検索:PubMed、Embase、Cochrane Central Registerを用いて2023年8月22日まで(2024年9月9日に更新)検索しました。地理的・言語的制限はありません。2022〜2023年の学会抄録も対象に含め、検索の網羅性を担保しました。
バイアス評価:RCT:Cochrane Risk of Biasツール/NRCS:Newcastle-Ottawa Scale
統計解析:ログ変換されたHR(ハザード比)とその標準誤差を用いて、ランダム効果モデルによるメタ解析を実施しています。主要評価項目は全死亡率・心血管死亡率に対するハザード比です。
3. 結果
5484件の研究が検索され、最終的にメタ解析に含まれた研究は30件でした(RCT10件、NRCS20件)。
総参加者数は1,175,615名(男性77%女性23%)、平均年齢:59.5歳、平均追跡期間:5.1年でした。
<主要評価項目>
全死亡率のハザード比(CPAP群 vs 非CPAP群):HR0.63(95%CI 0.56-0.72, p<0.0001)
心血管死亡率のハザード比(CPAP群 vs 非CPAP群):HR0.45(95%CI 0.29-0.72, p<0.0001)
→CPAPは全死亡率を37%有意に低下、心血管死亡率を55%有意に低下させました。
CPAP使用量と全死亡リスクには明確な用量反応関係(dose-response relationship)が示唆され、使用量が多いほどリスクが低下しました。
4. 解釈
CPAP療法がOSA患者における全死亡率および心血管死亡率を有意に低下させるという結果は、従来のRCTの中立的な結果とは異なり、実臨床の観察研究との整合性を示す知見です。
RCTでは重症例(特に重度の眠気を伴うOSA患者)が倫理的理由から除外されやすくイベント発生率が低くなり効果を検出しにくいのに対し、NRCSは実臨床に近い集団(重症例を含む)を対象としているため、より高い有意差が検出されやすいと考えられます。
5. これまでの研究との比較
本研究は対象者数が110万人超と過去最大規模で、RCTとNRCSの双方を網羅的に評価しバイアスの徹底評価も実施しています。
6. 今後の課題と展望
CPAP療法と死亡率低下の因果経路の解明が必要と思われます。
社会的要因も健康格差是正のための研究対象となるべきです。
より厳密にアドヒアランスを測定した長期追跡研究や、リアルワールドデータを活用した前向き研究が求められています。
7. 結論
OSA患者に対するCPAP療法が全死亡率および心血管死亡率を有意に低下させることを強く支持する結果で、今後のガイドラインや政策的方針にも影響を与える可能性があります。
CPAPは単なる症状緩和ではなく生命予後改善へと再評価する必要があると考えられます。
アドヒアランス強化により、CPAPの有効性を最大限引き出すことが臨床現場に求められます。
***
以上となります。
神保町・九段下近隣にお住まいもしくはお勤めの方で睡眠時無呼吸症候群がご心配の方は、ぜひ当院までご相談ください。