血圧どのくらいになったら薬を飲むべき?

薬が必要な血圧はどのくらいでしょうか、という質問をよく受けます。わかりやすい目安を書きますと、
・血圧が130/80mmHgを超え始めたら、食事療法・運動療法を始めましょう。
・140/90mmHg以上が続く場合は外来受診しましょう。包括的リスク評価の上での内服治療を勧めます。
・Ⅱ度高血圧(160/100mmHg以上)は生活習慣の改善だけでは血圧の正常化は厳しく、内服治療は必須となることが多いです。
となります。
高血圧治療ガイドライン的には、「血圧高値で高リスク群またはⅠ度高血圧で低~中等リスク群は生活習慣改善を行い、1ヶ月後再評価後も高血圧が続く場合は内服開始。Ⅰ度高血圧で高リスク群は直ちに薬物療法を開始」です。
では、高血圧を放置した場合のリスクはどの程度なのでしょうか?
正常血圧(120/80mmHg未満)より血圧が上がれば上がるほど脳心血管系疾患リスクは上昇します。2024年のJ-ECHOスタディ(※)を引用しますと、正常血圧と比べた脳心血管系疾患リスクは~139/89mmHgで約2倍、~159/99mmHgで約3.5倍、~179/109mmHgで約4.1倍、180/110mmHg以上で約7.8倍にまで上昇します。
日本の高血圧に起因する死亡者数は年間10万人を超えています。健診で要受診・要治療と判定がありましたら、必ず病院を受診しましょう。
<参考文献>
※Blood pressure classification using the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension and cardiovascular events among young to middle-aged working adults

Keisuke Kuwahara et al. Hypertension Research volume 47, pages1861–1870 (2024)
関東・東海地方に本社のある企業等10数社による多施設共同研究(J-ECHOスタディ)より、高血圧の治療中ではない20歳~64歳の労働者81,876人を最大9年間追跡調査。脳心血管疾患(脳血管疾患、虚血性心疾患、心停止、心房細動、不整脈、心不全、大動脈瘤、大動脈解離、その他の動脈瘤・動脈解離)の発症リスクを評価した。
脳心血管疾患発症ハザード比は、正常血圧(120/80mmHg未満)と比較して正常高値血圧(120-129/80mmHg未満)1.98、高値血圧(130-139/80-89mmHg)2.1、Ⅰ度高血圧3.48(140-159/90-99mmHg)、Ⅱ度高血圧(160-179/100-109mmHg)4.12、Ⅲ度高血圧7.81(180/110mmHg以上)であった。 また、集団寄与危険割合は高値血圧群からⅠ度高血圧群までがほとんど(87%)を締めており、正常高値血圧の段階からの脳心血管疾患発症リスクに対する取り組みが必要なことが明らかになっ