グレープフルーツと血圧・コレステロールの薬:注意が必要な薬と安心な薬

「血圧やコレステロールの薬を飲んでいると、グレープフルーツは食べてはいけないのですか?」
患者さんからよくいただくご質問です。実際には、薬の種類によって答えが異なります。

グレープフルーツが薬に影響する仕組み

グレープフルーツなど一部の柑橘類には フラノクマリン類 という成分が含まれています。

これが体内の薬物代謝酵素 CYP3A4 を阻害するため、薬の分解が遅くなり、血中濃度が上昇します。

その結果、薬の作用や副作用が強く出る可能性があります。

CYP3A4が関与する薬は、降圧薬や脂質異常症治療薬のほか、睡眠薬や免疫抑制剤などにもあります。

また、この影響は摂取後数日間続くため、注意が必要です。

高血圧の薬(カルシウム拮抗薬)の場合

・ニフェジピン(アダラート、セパミット)

 CYP3A4による影響が強く、グレープフルーツの摂取は避けてください。

・アムロジピン(アムロジン)

 CYP3A4の影響は小さいため、通常の量のグレープフルーツであれば、過度に気にする必要はありません。

脂質異常症の薬(スタチン系)の場合

・影響が強い薬(摂取を避けるべき)

 アトルバスタチン(リピトール)、シンバスタチン(リポバス)

・影響がほとんどない薬(比較的安全)

 プラバスタチン(メバロチン)、フルバスタチン(ローコール)、ピタバスタチン(リバロ)、ロスバスタチン(クレストール)

まとめ

・グレープフルーツは薬によって「効きすぎ」や「副作用リスクの増加」を起こすことがあります。

・高血圧の薬では、アムロジピンは比較的安全ですが、ニフェジピンは注意が必要です。

・脂質異常症の薬では、ロスバスタチンやプラバスタチンは安全性が高い一方、アトルバスタチンやシンバスタチンは注意が必要です。

当院では、こうした特性を考慮し、できるだけ安全に服用できる薬を選択して処方しています。治療中の方の参考になれば幸いです。

<参考論文>

・「Interactions between grapefruit juice and cardiovascular drugs」Bailey & Dresser, Am J Cardiovasc Drugs 2004

・「Interaction of grapefruit juice and calcium channel blockers」Sica, Am J Hypertens 2006

・「Effects of ingestion of grapefruit juice or grapefruit on the hypotensive effect and plasma concentrations of dihydropyridine calcium antagonists (amlodipine and nifedipine): a case study」Nakagawa & Goto, Clin Exp Hypertens 2010

・「Pharmacokinetic interactions of fruit juices with antihypertensive drugs in humans: A systematic review and meta-analysis」Methaneethorn et al, Complement Ther Med 2025

・「Effect of concomitant treatment with a CYP3A4 inhibitor and a calcium channel blocker」Yoshida et al, Pharmacoepidemiol Drug Saf 2008

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