糖尿病について
血糖値を下げるホルモン(インスリン)が不足することにより、慢性的な高血糖を来す疾患です。多くは無症状ですが、未治療のまま放置した場合、数年から十数年で重大な合併症を発症し、その後のQOLを著しく損ねます。
健康診断で高血糖や糖尿病の疑いで要精査・要受診の場合、早めに受診しましょう。
分類
1型糖尿病 | 主に自己免疫が原因で膵β細胞が破壊され、インスリンが絶対的に不足した状態です。インスリン治療が必須です。 |
2型糖尿病 | 遺伝要因に過食・運動不足・肥満などの生活習慣要因が加わり、インスリン作用不足を生じて発症します。日本の糖尿病患者の9割以上がこれに相当します。 |
妊娠糖尿病 | 妊娠中に発見される糖代謝異常です。2型糖尿病発症リスクとなります。 |
その他の特定の機序・疾患による糖尿病 | 膵炎、遺伝子異常、薬剤性等に起因する糖代謝異常です。 |
症状
口渇・多飲・多尿・体重減少・易疲労感が主ですが、ほとんどの場合無症状で健康診断で発見されます。放置した場合、視力低下・下肢のしびれなどの症状が出現します。
診断と検査
空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、75gOGTT2時間値200mg/dL以上、HbA1c6.5%以上を「糖尿病型」と定義し、糖尿病型2回確認で糖尿病と診断します(HbA1cのみは不可)。ただし、典型的症状や網膜症がある場合は1回確認で診断する場合もあります。
1型糖尿病が疑われる場合、インスリン分泌能(CPR)と膵島関連自己抗体(抗GAD抗体・抗IA-2抗体)をチェックします。2型糖尿病が疑われる場合、インスリン抵抗性(HOMA-IR)をチェックします。
治療
糖尿病の治療目的は、合併症予防およびQOL維持です。
未治療の場合、三大合併症(網膜症・腎症・神経障害)の他、脳心血管疾患、認知症などを発症するリスクが非常に高くなります。
糖尿病以外の生活習慣病も合わせて検査・治療します。
合併症予防を目的として、HbA1c7.0%未満を目指します。
※血糖正常化を目指す場合は6.0%未満、治療強化が困難な場合の目標は8.0%未満です。年齢や病態を考慮し個別に目標を設定します。
網膜症や歯周病チェックのため、眼科・歯科にご紹介する場合があります。
①食事療法
1日の摂取エネルギー(kcal)=目標体重(kg)×25 が目安です。
②運動療法
有酸素運動を中心に、軽~中強度の運動を30分/日または週合計150~180分行います。※網膜症、神経障害、心血管疾患、足潰瘍、低血糖リスクがある場合は要相談
③薬物療法 体型・採血結果・年齢・併存症を参考に治療薬を選択します。
非肥満/インスリン分泌不全 | DPP-4阻害薬、メトホルミンなど |
肥満/インスリン抵抗性 | メトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など |
慢性腎臓病・心血管疾患併存 | SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など |
心不全併存 | SGLT2阻害薬など |
主な経口血糖降下薬
ビグアナイド薬 | 肝臓での糖新生抑制、糖利用促進、小腸での糖吸収抑制 | メトホルミン |
SGLT2阻害薬 | 尿への糖排泄を促進 | デベルザ、フォシーガ、カナグル、スーグラ、ジャディアンス |
チアゾリジン薬 | インスリン抵抗性改善 | アクトス |
α-GI | 糖吸収抑制 | ベイスン、セイブル、グルコバイ |
DPP-4阻害薬 | インスリン分泌促進 | グラクティブ、ネシーナ、テネリア、オングリザ、トラゼンタ、スイニー、エクア、マリゼブ、ザファテック |
GLP-1受容体作動薬 | インスリン分泌、食欲低下等 | リベルサス |
第三世代SU薬 | インスリン分泌促進 | アマリール |
イメグリミン | ミトコンドリア機能改善 | ツイミーグ |
メトホルミン+DPP-4阻害薬 | イニシンク、エクメットLD/HD、メトアナLD/HD | |
SGLT2阻害薬+DPP-4阻害薬 | カナリア、スージャヌ、トラディアンスAP/BP |
インスリン適応がある場合は、インスリン治療を行います(専門機関に紹介)
絶対的適応 | インスリン依存状態(1型糖尿病など)、高血糖性の昏睡、重症の肝障害・腎障害合併、重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術、糖尿病合併妊婦、静脈栄養時 |
相対的適応 | 著明な高血糖(空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上)、経口薬で血糖コントロール不良の場合、やせ型で低栄養状態、ステロイド使用時の高血糖、糖毒性を積極的に解除する場合 |
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