LDLコレステロールと動脈硬化 ― なぜ「悪玉」と呼ばれるのか
コレステロールは細胞膜やホルモン合成に不可欠な成分ですが、血液中に過剰に存在すると動脈硬化の原因になります。その運搬役であるリポタンパクのうち、LDL(低比重リポタンパク) は肝臓から全身へコレステロールを届け、必要以上に多いと血管壁に沈着します。一方、HDL(高比重リポタンパク) は余分なコレステロールを回収して肝臓に戻すため、「善玉」と呼ばれます。LDLが「悪玉」とされるのは、血管障害に直結するからです。
プラーク形成の仕組み
LDLが血管内皮に侵入すると酸化され、マクロファージに取り込まれて「泡沫細胞」となります。これが集まり脂質のかたまり(プラーク)を形成し、血管を狭めます。プラークが破れると血栓が生じ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。
疫学研究
大規模研究では、LDLコレステロールが30mg/dL上昇するごとに心血管疾患リスクが約1.2〜1.3倍 上昇することが示されています。日本人データでも LDL/HDL比 の高さが動脈硬化性疾患リスクと密接に関連することが確認されており、単にLDLの量だけでなく「バランス」も重要です。
LDLコレステロールの管理目標
動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2022)に示された管理目標は次の通りです。
・一次予防
低リスク:LDL-C <160mg/dL
中リスク:<140mg/dL
高リスク:<120mg/dL
・二次予防
LDL-C <100mg/dL
特に高リスク例(急性冠症候群・糖尿病・家族性高コレステロール血症など):<70mg/dL
診断基準は LDL-C ≥140mg/dLを「高LDL血症」、120〜139mg/dLを「境界域」と定めています。
non-HDL-C(総コレステロール値からHDL-C値を引いたもの)は、LDLに加えVLDLなども含む“すべての動脈硬化促進粒子”を反映します。空腹でない採血や高トリグリセリド血症の際にも有用な補助指標です。
久山町スコア
福岡県久山町の長期追跡研究から導かれた「久山町スコア」を計算すると、10年間の冠動脈疾患と脳梗塞の発症リスクが予想可能です。年齢・血圧・糖尿病・喫煙歴などを加味することで、より実態に即した管理が可能になっています。
脂質異常症の予防と治療
基本は生活習慣の改善です。
・食事:飽和脂肪酸を控え、魚や野菜、食物繊維を多く摂取
・運動:有酸素運動を週150分程度
・禁煙、節酒、適正体重の維持
それでも目標に届かない場合は、スタチンなどの薬物療法を検討します。
健康診断でLDLコレステロール高値を指摘された方は、「高血圧といびきの内科 神保町駅前」までお気軽にご相談ください。