いびきと日中の眠気 — それは不眠症ではなく睡眠時無呼吸かもしれません

「しっかり寝ているはずなのに、日中の眠気がひどい」
「会議中や運転中に、意識が飛びそうになることがある」
「家族から、いびきがうるさい・呼吸が止まっていると言われた」

こうした症状の背景として、必ず考えなければならない病気があります。睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)です。

睡眠時無呼吸症候群は、国内に数百万人の患者がいると推計される一方、その多くが未診断のまま放置されているといわれます。本人は眠っている間のことなので気づきにくく、「眠りが浅い」「疲れが取れない」という自覚から、不眠症だと思って受診される方も少なくありません。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群のサイン、放置するリスク、そして検査と治療の流れをご説明します。

睡眠時無呼吸症候群とは ― 眠るたびに「窒息と覚醒」を繰り返す病気

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に喉の空気の通り道(気道)がふさがり、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸の低下を、一晩に何十回も繰り返す病気です。

呼吸が止まると体は酸素不足になり、脳は窒息を回避するために強制的に短い覚醒を起こします。本人にその記憶はほとんど残りませんが、一晩中「眠っては起こされる」を繰り返している状態です。これでは何時間布団にいても、深い睡眠は取れません。
日中の強烈な眠気や倦怠感は、この「質の破壊された睡眠」の結果です。

こんなサインはありませんか ― セルフチェック

ご自身の症状

チェック項目
  • 日中の強い眠気(会議中・食後・運転中にうとうとする)
  • 朝起きたときに頭痛がする、口がカラカラに渇いている
  • 何時間寝てもすっきりしない、熟睡感がない
  • 夜中に何度も目が覚める、トイレに2回以上起きる
  • 集中力・記憶力が落ちたと感じる

周囲からの指摘

チェック項目
  • いびきが大きい(隣の部屋まで聞こえる)
  • いびきが急に止まり、しばらくして「ガガッ」と大きな呼吸で再開する
  • 寝ている間に呼吸が止まっていた

リスク要因

チェック項目
  • 肥満、最近の体重増加
  • 首が太い・短い、あごが小さい
  • 高血圧(特に薬を飲んでも下がりにくい)
  • 飲酒習慣(寝る前の飲酒は気道をふさがりやすくします)

なお、「太っていないから大丈夫」とは限りません。 日本人はあごの骨格の特徴から、痩せていても睡眠時無呼吸になる方が一定数います。やせ型でもいびき・眠気があれば検査の対象です。

放置するとどうなるか ― 眠気だけの問題ではありません

睡眠時無呼吸症候群の怖さは、日中の眠気そのものよりも、全身への長期的なダメージにあります。

無呼吸のたびに体は酸素不足と覚醒反応にさらされ、血圧が跳ね上がります。これが毎晩何十回も繰り返されることで、高血圧・不整脈・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病のリスクが大きく高まることが数多くの研究で示されています。「降圧薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」方の隠れた原因としても重要です。

また、日中の眠気による交通事故・労働災害のリスクも見過ごせません。運転を伴うお仕事の方は、ご自身と周囲の安全のためにも早めの検査をおすすめします。

「不眠症だと思っていたら無呼吸だった」というケース

当コラムで扱ってきた不眠症と、睡眠時無呼吸症候群は、症状が重なる部分があります。

  • 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
  • 熟睡感がない
  • 日中の眠気・倦怠感

ここで重要なのは、原因が無呼吸である場合、睡眠薬だけでは解決しないということです。それどころか、一部の睡眠薬やアルコールは気道の筋肉を緩め、無呼吸を悪化させる可能性すらあります。

だからこそ当院では、不眠のご相談の際に、いびき・無呼吸のサインがないかを必ず確認しています。「眠れない」の原因を見極めることが、正しい治療の第一歩です。

検査と治療の流れ

検査 ― まずは自宅でできる簡易検査から

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずはご自宅で普段どおり眠りながら行える簡易検査が一般的です。手の指や鼻にセンサーをつけて眠るだけで、睡眠中の呼吸の状態や血中酸素の低下を記録できます。入院の必要はありません。

検査の結果、より詳しい評価が必要な場合には、精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)が可能な医療機関をご紹介します。検査をご希望の方、ご自身が対象になるか知りたい方は、診察時にご相談ください。

治療 ― 重症度に応じた選択肢があります

主な治療法
  • CPAP(シーパップ)療法:中等症〜重症の方の標準的な治療です。睡眠中に鼻マスクから空気を送り、気道がふさがるのを防ぎます。使い始めたその日から、いびきと無呼吸を抑える効果が期待できる治療で、保険適用で月1回程度の通院で継続管理します
  • マウスピース治療:軽症〜中等症の方に。下あごを前方に保持して気道を確保します(歯科と連携して作製します)
  • 生活習慣の改善:減量、節酒(特に寝酒をやめる)、横向きで寝る工夫など。軽症の方はこれだけで改善することもあり、CPAP中の方にも並行して取り組んでいただきます

まとめ ― 「いびき」は体からの警告音です

  • 大きないびき+日中の強い眠気は、睡眠時無呼吸症候群の典型的なサインです
  • 放置すると高血圧・心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高まります
  • 検査は自宅でできる簡易検査から始められます
  • 不眠だと思っていた症状の原因が、無呼吸であることもあります

ご家族にいびきを指摘されたことは、恥ずかしいことではなく、病気を見つけるきっかけです。気になるサインがあれば、お気軽にご相談ください。